青い本-3章-

青い本を開いてみた。
3章は誰かの青春の1ページが数10ページに渡って書かれていた。どうやらここで完結らしい。
文章は、もう青春なんて言葉では片づけられないものになっていた。
最初は、ただの後日談だった。
卒業式。桜。写真。笑い声。
誰もが「終わった」と思っていた、ありふれた区切り。
でも、そこから先のページは妙に細かく、妙に執着していた。
「あの日、駅のホームで」
「あの日、河川敷で」
「あの日、教室で」
何度も何度も同じ場面を思い返して、同じ言葉を繰り返している。
まるで、記憶を何かに縫い付けるみたいに。
読み進めていると、文章が少しずつ崩れていった。
誤字が増え、句読点が消え、行間が詰まり、文字が歪んでいく。
ページの端には、同じ言葉が何度も殴り書きされていた。
「忘れたら終わる」
「忘れたら終わる」
「忘れたら終わる」
そして、最後の数ページは、もはや文章になっていなかった。
意味のない単語の羅列。
誰かの名前。
日付。
数字。
……そして、唐突にこう書かれていた。
「見えてしまった」
「窓の外に、俺がいる」
「俺が、俺を見ている」
その次のページには、紙が破れるほどの筆圧で、たった一文だけが残っていた。
「もう耐えられない」
最後のページは、インクが滲んでほとんど読めなかった。
ただ、端に残った走り書きだけが、妙に鮮明だった。
「すべてを捨てれば、消えられると思った」
「だから俺は、全部捨てて、外へ出た」
「笑いながら走った」
「泣きながら走った」
「そして——」
そこから先は、真っ白だった。
彼は発狂して、どこかへ走り去ってしまったらしい。
そのまま彼はどうなってしまったのだろう?
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