地下迷宮-戦士との会話-

案外話をしてみると通じるもので、気がつけば戦士は剣と盾を地面に置き、楽な姿勢で談笑していた。
「ここはいいところだ。」
戦士は心からそう思っている顔で呟いた。
こんな鬱屈した地下迷宮がいいところだなんて、自分では持ち得ない豊かな感性をお持ちの方らしい。
「地下迷宮…? そういえばさっきからそなたは何を言っておるのだ?」
…そうだ。談笑している風でありながらも、どこかお互いの言葉が接続しない。
空虚な堂々巡りのような会話が続いている。
「もしそなたにとってここが地下迷宮と思うのなら…」
戦士は何か思い当たる節があるかのような口調で天井を仰いだ。
「いや、断言するのはやめておこう。ただ、少なくともはっきりと言えるのは…」
拙者とそなたでは見えているものが違う−−
戦士はさっきまでと打って変わって少しだけ小さな声でそう答えた。
そして地面に置かれた盾を持ち直し、それを押し付けた。
「拙者にとってこれは『覇者の盾』と呼ぶものだが、そなたにとってはどうなんだろうな」
戦士は少し寂しげな表情を浮かべ、そして会話はこれで終わりと言わんばかりに立ち上がった。
「誰だって帰る場所が欲しい。そう思わないか?」
そう言って剣を拾い、背中を向けた。
「その盾は君にあげよう。獰猛なうさぎ相手だと心許ないだろうが」
押し付けられた盾を眺めたほんの数秒の間で、もうそこには誰もいなかった。
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